それぞれの夏はまだ始まったばかり

 

 



少し埃っぽくなった教室はどこかさみしい


電気は点けなくても窓から入る日差しで十分だった

用事は済ませた

あとは帰るだけだった

 






「あれ、さんお久しぶり」



「仁王君、」



「夏休みなのにどうしたんよ」


「ちょっと、忘れ物をね」

ほら、数学の参考書


そうかい
そう小さく返してくれた仁王君は忘れ物をとりに学校に来ているわけではない
普段の姿からはあまり想像できない湿って乱れた髪の毛とか、少し汚れた顔がそれを物語っている


「仁王君は今日も部活だね」


「そうなんよー夏休みなのに毎日毎日部活ばっかじゃ」

うんざりそうながらもどことなく満たされているような顔の彼が少し羨ましかった

毎日毎日部活か、

 


「えらいよね」

「そうかのー」

「うん、私なら死んでるよ」

さんならそうかもねぇー」

私の冗談に付き合ってケタケタと笑う仁王君
ゆっくりと時間は流れる

 


「おっと、休憩終わっちゃうわ」

お水飲みに行かないと仁王君も死んじゃう!!
おどけて言ったそんな冗談に本当に顔が緩んでしまう

「じゃぁさん、またね」

「うん、じゃぁ」

 

 



「全国、頑張ってね」

あんまし大きな声では言えなかったけれど

 


「ありがと」

 

振り返った仁王君の笑顔に満たされた





 


応援してるよ








(丸井ーわしは死んでしまうかもしれん)










                        なんとなく普通な仁王